球麻痺とは・・・
球麻痺(きゅうまひ、bulbar palsy)とは、延髄にある脳神経核が障害され、口・舌・喉の運動障害によって起こる症状である。構音障害(呂律が回らない)、嚥下障害(食べ物、飲み物の飲み込みが悪くなる)、呼吸や循環の障害が生じる。
延髄を外側から見るとボールのように丸い形をしているので “球”と呼ばれる。そのため、延髄の麻痺のことを球麻痺といい、臨床では延髄の運動神経麻痺に限定して用いる。
発生機序
延髄には9番(舌咽神経)、10番(迷走神経)、12番(舌下神経)の脳神経核が存在する。これらの神経核が両側性に障害され、咽頭(鼻腔の終わりから声帯・食道の上まで)、口蓋(口腔上壁)、喉頭(声門上部から下部、気管の上まで)を動かす筋肉の運動が障害される。
結果として、嚥下(食べ物を飲み込む)、構音(言葉を発する)ができなくなる、舌の運動障害をきたす。その他、舌の萎縮、舌のぴくぴくとひきつるような筋収縮(筋線維束れん縮)、咽頭(嘔吐)反射が弱まるなどする。
代表的な疾患
球麻痺を来す代表的な疾患は、筋萎縮性側索硬化症、ギラン・バレー症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、延髄梗塞や延髄出血である。
仮性(偽性)球麻痺(かせい・ぎせいきゅうまひ、Pseudobulbar palsy
球麻痺とほぼ同様の症状をきたす病態として、仮性(偽性)球麻痺がある。両側性の皮質脊髄路の障害で出現する。一般的には大脳の左右両方に脳出血や脳梗塞などが起こることにより生じる。球麻痺とは異なり、舌萎縮が乏しく、筋線維束れん縮は認めない。錐体路の症状として下顎反射の亢進、表情筋の緊張が亢進することで強制泣き・笑い症状を認めることがある。